● ちょっと前に、仕事として配信業務を任されていたとある意識高い系オンラインセミナーがあったんですよ。その日は、若い女性が問題になっている「政治と宗教」について学ぶというテーマで、選挙に詳しいジャーナリストからの選挙の意味、宗教の関わり、みたいな解説をしてもらう内容だったんです。その解説内容は実に適切だったし、疑問はなかったんですけど、終了後MCの女性から「今日はたくさんの気付きがありました!」という感想があったんですよ。たぶん、お世辞じゃなく、彼女なりにそう感じたんだとは思うんですけど、「気付きがあった」って、意識高い若者はよく使うんですよね。(「気付いた」ではなくて「気付きがあった」と言うのが特徴)「ためになった」ということなのかなあ?

● あくまで、その言葉に関する印象なんですけど「気付き」って、その時だけの現象じゃないですか。何も認識していないよりはだいぶマシだけど、気付いたら、それで解決したつもりになった感じが濃厚なんですよ。おそらく、彼女はその後、選挙や宗教のことについて深く調べたりしないんじゃないかな?と思うんです。これって「わかりやすい政治と宗教」みたいな新書を一冊読んで、その後まるで専門家のようにSNSで講釈しだすパターンも一緒なんですよ。「気付き」なんて入口だし、きっかけなんだからそこから関心に沿って細かく学んでいかないと、結局、ディティールが理解できず、「目次」「あらすじ」しか覚えていないことになる。

● ここから突然、AIの話になりますけど、生成AIが作ってくれるものって、おそらく「気付き」のとっかかりだったり「目次」や「あらすじ」なんです。なので、そういう若者にとっては識者のセミナーでも、AIにまとめさせた情報でも変わりがないんだろうな、と思いました。ネット上で、「この仕事は生成AIにやらせたら効率上がるんじゃない?」という発言をする意識高い系経営者って多いけど、そういう人って「その仕事」に関しての質を理解できていないと思うんです。「効率」だけ優先すると、そういう発想になっちゃう。効率をつきつめると、絶対にどこかでどん詰まります。

● 本来「仕事」に携わる人っていうのは「気づいたあと」で長い時間をかけて、細かな知識を学び、蓄積して、その上で技術や、ノウハウを身に着けていく「積み重ね」をしているんですけど、「気付きがある」人は、その先がないから「その仕事のプロ」にはなれないんですよ。この前、ネットで煽りタイトルにつられてたまたま観ちゃった『令和の虎』(実はすごく嫌いな番組)に出てた、若いベンチャービジネスの人がまさにそんな感じでした。「不動産屋に2年努めて、学ぶことで色々気づいたことがあって独立。新たな新事業を立ち上げたい」って言うんですけど、2年で覚えたことで、新規事業を思いつくなんて天才じゃないと無理だよね、という話。案の定、番組内では出資者たちが知恵の浅さにあきれてましたけど、本当に薄っぺらかったんです。

● 最近は「生成AIがまとめたWeb記事」が、ネットに出回り始めて、その内容のつまらなさにあきれているところだったんですけど、そりゃあ「気づいたことメモ」でしかないからです。「まとめ」が欲しい人は大いに活用したらいいと思うんですけど、どん詰まりの情報で、そこには発展やブレイクスルーの視点がない(現状の生成AIはまだそこに限界がある)。

● 奇しくも、冒頭のオンラインセミナーの時、MCの若い女性が「政治と宗教」というテーマを語りだすにあたっての挨拶で、「宗教といえば先日、『チ。』という凄いアニメがスタートしましたが……」と、『チ。』に言及していました。

『チ。- 地球の運動について-』は、確かに面白い物語だし、宗教にもコミットする野心作だなとは思っているんですけど、あれこそ、それぞれの時代の主人公たちが「真理」に「気づく」話でもあるんですけど、そこには数百年単位での学び、悩み、構築してきた人の「蓄積」の重要さも語られている話なんですよ。「気付きだけでは、何も明らかにならない」というテーマが描かれているわけで、自分は、今の時代『チ。』が生まれた価値って、そこにあると思っています。積み重ね。蓄積。ダサい言葉で言えば継続。自分は、その先にしか「ましな仕事」はない、とつくづく思います。

● 真面目な話、ここで終わり。

● 今度のHGのウルトラ怪獣、「ウルトラマン先生編」で、クレッセントとギコギラーというなかなかのラインナップなんですけど、あれ?!今年の顔、アークはともかく、肝心の80じゃなくてセブンなんだ!という驚き。ウルトラマン先生は?!!(まあ、近年、HGX三条陸セレクションで出たばかりというのはあるにせよ)

● ここ数日、彼女が「消化の良いものしか食べられない」ということで、先日、夏に買い込んであったそうめんをゆでて、温かい出汁で「にゅうめん」を作りました。自分はさすがにさみしいので、揚げ玉と、生卵を入れて食べましたが美味しかった!子供の頃は、にゅうめんの「腑抜けた感じが嫌い」だったけど、年を取るとこんなに美味しいと思えるんだ!

● 日曜も終わって、明日からまた熾烈な「仕事」の日々が始まってしまう。そして12月に突入した今、「たいしたことできなかった1年」を振り返って、なんだかへこんでしまうのです。もうちょっとアッパーな感じで年末を迎えたかったけど、なんだ、去年の絶望感に比べたらマシかも?!